ウワウルシは、北半球の原野や高山に自生する、ツツジ科の高さ50cmほどの常緑低木です。
ウワウルシという呼び名は、種小名の「uva-ursi」(ラテン語で「クマのブドウ」を意味していて、この種小名は和名の「クマコケモモ」の由来となっています)をそのまま日本語読みしたもので、ウワウルシがウルシ科の植物というわけではありません。
ウワウルシは古くから薬用植物として利用されてきたと考えられていて、13世紀以降、その殺菌作用から尿感染症に効果のある利尿剤として用いられてきました。
この記事では、ウワウルシの持つ殺菌効果や、近年注目されている美白効果、育て方やハーブティーとしての味わい方について解説します。
ウワウルシの基本情報
名称 | ウワウルシ(ウバウルシ) |
英名 | Uva-ursi、Bearberry、Manzanita、Kinnilkinnick、Sandberry |
学名 | Arctostaphylos uva-ursi |
和名 | クマコケモモ |
分類 | ツツジ科クマコケモモ種クマコケモモ |
原産地 | ヨーロッパの山岳地帯 (スイス、スペイン、ノルウエー) アメリカ北部、カナダなど |
主要成分 | ハイドロキノン配糖体:arbutin(7 ~ 10 %)、methylarbutin
その他:タンニン類、没食子酸、ellagic acid、ursolic acid、quercetin、allantoin |
使用部位 | 葉 |
代表的効能 | 尿路消毒・殺菌効果 美肌効果 膀胱や肝臓の疾患予防・治療、利尿効果 むくみ解消 抗酸化作用 生活習慣病予防 |
利用法 | ハーブティーとして(タンニンを抑えるため、ペパーミントをブレンドするとなお可) |
ウワウルシの効果・効能・成分を解説
この記事では、ウワウルシの効果・効能・成分について、主に古くから認識されてきた尿路消毒効果と、近年になって注目されている美肌効果(美白効果)の2点について説明します。
この2点については、両方ともウワウルシの葉に含まれている天然型フェノール配糖体である「アルブチン」が生み出す効果です。アルブチンが体内で加水分解されると、有機化合物であるハイドロキノン(ヒドロキノン)が生産されます。
このハイドロキノンには殺菌作用があるため、尿路消毒に有効です。また、ハイドロキノンは腎細胞を刺激するため、利尿効果を持ちます。尿と一緒に身体の中の余分な成分や老廃物が排出されるため、むくみの解消にも効果的です。
次に、ウワウルシの持つ美肌効果についてです。メラニン色素は、細胞内のタンパク質合成に関わるアミノ酸の1つであるチロシンが、酵素チラシノーゼにより反応を繰り返すことで生成されます。ウワウルシに含まれるアルブチンやエラグは、体内に取り込まれるとチロシンの代替となり、酵素チラシノーゼによる活性阻害を行うことが明らかとなっています。それによりメラニンの生成が抑制され、肌の美白効果が生まれます。ウワウルシは、今では美白効果を謳う多くの化粧品に配合されています。
以上2点の効果以外にも、ウワウルシにはタンニン、エラグ酸、フラボノイド類など抗酸化作用を持つポリフェノールが豊富に含まれ、活性酸素の働きを阻害し、細胞の老化を防いでくれます。
さらに、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞などのリスクが高まる要因である、LDL(悪玉)コレステロールなどの酸化も防いでくれるので、生活習慣病全体の予防効果も期待されています。
また、最近では、ウワウルシか浸出したエキスをヘアトニックに加えることで、皮脂腺を引き締めるなど頭皮の状態を整え、根毛を強くし、抜け毛を予防する効果も期待されています。
ウワウルシの副作用や注意事項、禁忌など
ウワウルシはタンニンやエラグ酸を多く含んでいます。個人差もありますが、これらの成分は、多量に摂りすぎると胃を刺激し、荒らしてしまう性質があります。
よって、日本薬局方では、大人の1日量の限度を15g、使用期間は1ヶ月としています。摂取量や服用期間によっては胃腸の不快感・吐き気などを引き起こす可能性がありますから、多量使用・常飲は避けるようにした方が無難です。
また、治療中の病気がある人や、妊婦または妊娠しているとおもわれる人,アレルギー症状を起こしたことがある人については、使用に際し、医師、薬剤師、登録販売者に相談することをお勧めします。
さらに、妊娠中・授乳中の方、子ども、腎臓障害・酸性尿の方、貧血の方については、使用を控えるようにしてください。
ウワウルシの歴史・起源・由来
ウワウルシは古くからヨーロッパで薬用植物として利用されて来たと考えられています。
また、それほど美味しくはないものの、果実も食料とされて来たと考えられています。13世紀ころには、ウワウルシがハーブとして書物で紹介されるようになりました。ウワウルシは中世ヨーロッパで、尿感染症に効果的な利尿剤として用いられてきたと考えられています。
アメリカ大陸では、記録こそ残っていませんが、ネイティブ・アメリカンは果実を食用や飲用にしていたと考えられています。
また、葉をハーブと混ぜてタバコ“Kinnikinnick”としても利用しており、現在でもアメリカインディアン居留地でお土産とされています。なお、日本では自生していませんが、日本薬局方に収載されています。
ウワウルシの概要、花や育て方など
ウワウルシは、育つと高さは50cmほどになり、葉は矩形もしくは円形で2.5cmほど、春から初夏にかけて釣鐘型をしたピンク色の小花をいくつか咲かせます。果実も出来ますが、酸味が強いため食用には向きません。
育てるには、まず種を40~50℃のお湯に入れて、そのまま24時間置いてください。その後、濡れたペーパータオルに包んで、冷蔵庫に2日間入れて下さい。桜になる季節になったら種まきをして下さい。株間は30cm取って下さい。
覆土は1cmで十分です。発芽するまで2~4週間かかります。日陰で管理してください。暑さには強くないので、発芽してからも直射日光が1日中当たる場所は避けて下さい。
肥料は10cm以上になってから適度にあげてください。
20cmくらいに育ったら、大きめの植木鉢に植え替えをして新しい土と肥料をあげて下さい。その際、根っこを傷つけないように土をつけたまま植え替えしてください。
夏至の前後2週間は定植を避けましょう。水はたっぷりと与えて下さい。特に真夏は土が乾きやすいので、回数を多めにして下さい。
冬は、地上部は枯れますが、根は生きています。耐寒性が強いため、防寒対策は不要です。毎年5~6月に白色かピンク色の花を無数に咲かせます。実は赤く成熟する10月頃から収穫出来ます。
ウワウルシのレシピ、食べ方やティーの入れかた飲み方など
ウワウルシをハーブティーとして楽しむには、水500mmに茶葉小さじ1を入れ、煮出して抽出します。
しっかりとアルブチンを抽出するには20~30分の時間が必要ですが、胃に不快感を与えるタンニンやエラグ酸の抽出量も増えてしまいます。
胃の不快感を軽減させるためには、胃を守る働きのあるペパーミントを併せて飲むといいでしょう。
注意点として、ペパーミントはウワウルシと一緒に煮詰めず、沸騰したお湯に入れて抽出してください。味についても、ウワウルシ単体だと苦みがありますが、ペパーミントと併せることで苦みを抑えることができます。
ウワウルシのハーブティーは効果が大きい分、一度に飲む量はあまり多すぎないようにしましょう。